日新公いろは歌解説

南さつま市

日新公いろは歌とは、島津忠良(日新斉)が、人生の教えを47首の歌にしてまとめたものです。
忠良は、戦国武将島津義弘の祖父にあたります。
南さつま市加世田にある竹田神社に祀られており、いろは歌が彫られた石碑が並ぶ「いにしえの道」があります。

竹田神社
  1. いにしへの道を聞きても唱へても わが行ひにせずばかひなし
  2. 楼(ろ)の上もはにふの小屋も住む人の 心にこそは高きいやしき
  3. はかなくも明日(あす)の命を頼むかな 今日も今日もと学びをばせで
  4. 似たるこそ友としよけれ交(まじわ)らば 我にます人おとなしき人
  5. 仏神他(た)にましまさず人よりも 心に恥ぢよ天地よく知る
  6. 下手ぞとて我とゆるすな稽古だに つもらばちりも山とことの葉
  7. 科(とが)ありて人を斬るとも軽(かろ)くすな 活かす刀もただ一つなり
  8. 知恵能は身につきぬれど荷にならず 人は重んじはづるものなり
  9. 理も法も立たぬ世ぞとてひきやすき 心の駒の行くにまかすな
  10. 盗人はよそより入ると思ふかや 耳目の門に戸ざしよくせよ
  11. 流(る)通(づう)すと貴人(きにん)や君が物語り はじめて聞ける顔もちぞよき
  12. 小車の我が悪業(あくごう)にひかれてや つとむる道をうしと見るらん
  13. 私(わたくし)を捨てて君にし向はねば うらみも起り述懐(しゅっかい)もあり
  14. 学(がく)文(もん)はあしたの潮のひるまにも なみのよるこそなお静かなれ
  15. 善きあしき人の上にて身を磨け 友はかがみとなるものぞかし
  16. 種となる心の水にまかせずば 道より外(ほか)に名も流れまじ
  17. 礼するは人にするかは人をまた さぐるは人を下(さ)ぐるものかは
  18. そしるにも二つあるべし大方は 主人のためになるものと知れ
  19. つらしとて恨みかへすな我れ人に 報ひ報ひてはてしなき世ぞ
  20. 願わずば隔(へだ)てもあらじ偽(いつわり)の 世に誠ある伊勢の神垣
  21. 名を今に残し置きける人も人 心も心何かおとらん
  22. 楽も苦も時過ぎぬれば跡もなし 世に残る名をただ思ふべし
  23. 昔より道ならずして驕る身の 天のせめにしあはざるはなし
  24. 憂かりける今の身こそは先の世と おもへば今ぞ後の世ならん
  25. 亥にふして寅には起くと夕(ゆふ)露(つゆ)の 身を徒(いたずら)にあらせじがため
  26. のがるまじ所をかねて思ひきれ 時に到りて涼しかるべし
  27. 思ほへず違(たご)ふものなり身の上の 欲をはなれて義を守れ人(ひと)
  28. 苦しくとすぐ道を行け九曲折の 未は鞍馬のさかさまの世ぞ
  29. やはらぐと怒るをいはば弓と筆 鳥に二つの翼とを知れ
  30. 万能も一心とあり事(つか)ふるに 身ばし頼むな思案(しあん)堪忍(かんにん)
  31. 賢(けん)不肖(ふしょう)用ひ捨つると言ふ人も 必ずならば殊勝(しゅしょう)なるべし
  32. 無勢(ぶぜい)とて敵を侮ることなかれ 多勢を見ても恐るべからず
  33. 心こそ軍(いくさ)する身の命なれ そろゆれば生き揃はねば死す
  34. 回向には我と人とを隔つなよ 看(かん)経(きん)はよししてもせずとも
  35. 敵となる人こそはわが師匠ぞと 思ひかへして身をも嗜め
  36. あきらけき目も呉竹(くれたけ)のこの世より 迷はばいかに後(のち)のやみぢは
  37. 酒も水流れも酒となるぞかし ただ情あれ君が言の葉
  38. 聞くことも又見ることも心がら 皆まよひなりみな悟りなり
  39. 弓を得て失ふことも大将の 心ひとつの手をばはなれず
  40. めぐりては我が身にこそは事(つか)へけれ 先祖のまつり忠孝の道
  41. 道にただ身をば捨てむと思ひとれ 必ず天の助けあるべし
  42. 舌だにも歯のこはきをば知るものを 人は心のなからましやは
  43.  酔(え)へる世をさましもやらで盃に 無明(むみょう)の酒をかさねるは憂し
  44. ひとり身をあはれと思へ物ごとに 民(たみ)にはゆるす心あるべし
  45. もろもろの国や所の政道は 人に先(ま)づよく教へ習はせ
  46. 善に移り過(あやま)れるをば改めよ 義不義は生れつかぬものなり
  47. 少しきを足れりとも知れ満ちぬれば 月もほどなき十六夜(いざよい)のそら

いにしへの道を聞きても唱へても わが行ひにせずばかひなし

昔の立派な教えを聞いたり口で唱えたりしても、実行しなければ何の役にも立たない。
★行動に移すことが大切です。

楼(ろ)の上もはにふの小屋も住む人の 心にこそは高きいやしき

立派な家に住んでいようと、粗末な小屋に住んでいようとも、住む場所によって人間の価値は判断できない。住む人の心にこそ尊い・卑しいの区別があるのだ。
★見た目ではなく、心のあり方によってこそ真価が決まります。

はかなくも明日(あす)の命を頼むかな 今日も今日もと学びをばせで

明日があると頼りにして、今日やるべきこと(学問や修行)を先延ばしにしてはいけない。
★明日のことは誰にも分からない。今この瞬間を大切にしましょう。

似たるこそ友としよけれ交(まじわ)らば 我にます人おとなしき人

自分と似たような人とはすぐ仲良くなるが、それでは必ずしも進歩は望めない。
自分より優れた才能や見識を持つ人と友となることが必要である。
★自分とタイプの違う人や先輩・後輩とも友になりましょう。大久保利通と西郷隆盛も年齢が離れています。

仏神他(た)にましまさず人よりも 心に恥ぢよ天地よく知る

神仏はどこにでもいるものではなく、自分の中にいるのだ。
恥ずべき行動をしたら、自分の良心に恥じなさい。天地は良く知っているものだ。
★自分の心に恥じない行動をしましょう。

下手ぞとて我とゆるすな稽古だに つもらばちりも山とことの葉

自分は下手だからと稽古を怠ってはならない。
ちりも積もれば山となるというように、稽古を積めば少しずつ上達するだろう。
★継続は力なり!

科(とが)ありて人を斬るとも軽(かろ)くすな 活かす刀もただ一つなり

罪をおかした人を軽々しく斬ってはいけない。活かすも殺すも主君の心次第である。
★もう1度チャンスを与えることもできます。人を裁く時は慎重にしましょう。

知恵能は身につきぬれど荷にならず 人は重んじはづるものなり

知恵や技能はいくら身につけても荷物にはなりません。
知恵や技能がある人は尊敬されるし、逆に無いと恥ずかしい思いをすることもあるだろう。
★身につけた知識や技能は一生ものです。

理も法も立たぬ世ぞとてひきやすき 心の駒の行くにまかすな

道理が通らず、法もおこなわれない世の中だからといって、自暴自棄になってはならない。
★自分の正道は貫きましょう。

盗人はよそより入ると思ふかや 耳目の門に戸ざしよくせよ

盗人は外から入ると思うかもしれないが、真の盗人は耳や目から入ってくるものだ。
目や耳をよく戸締りをせよ。
★人の心を迷わす盗人は耳や目から入って来る情報です。

流(る)通(づう)すと貴人(きにん)や君が物語り はじめて聞ける顔もちぞよき

たとえ自分が知っていることでも、目上の人の話は初めて聞くというような態度で聞くのがよい。
★人の話は真剣に聞きましょう。

小車の我が悪業(あくごう)にひかれてや つとむる道をうしと見るらん

怠け心や弱い心に引っ張られると、やがては本来しないといけないことまで辛くなり嫌になってしまう。
★自分のやるべきことを楽しく、一生懸命しましょう。

私(わたくし)を捨てて君にし向はねば うらみも起り述懐(しゅっかい)もあり

私の心を捨てて一身捧げて主君に仕えなければ、恨みも起こり不平不満もでる。
★私利私欲を捨てて、素直な心で相手と接しよう。

学(がく)文(もん)はあしたの潮のひるまにも なみのよるこそなお静かなれ

学問は朝も昼も励まなければならないが、特に夜は静かで勉強しやすい。
★武士は、昼間は武芸に励み、夜は勉強をして頑張っていたのでしょう。

善きあしき人の上にて身を磨け 友はかがみとなるものぞかし

善いことも悪いことも他人の行いを見て自分を磨くとよい。
特に、友人は自分を正す鏡となる。
★友達は自分を映す鏡です。

種となる心の水にまかせずば 道より外(ほか)に名も流れまじ

煩悩の種となる欲にまかさなければ、道に外れた悪い評判もたたないだろう。
★自分の弱い心に負けないようにしよう。

礼するは人にするかは人をまた さぐるは人を下(さ)ぐるものかは

礼を尽くす事は人にするものであろうか、また見下げることは人を見下げるものであろうか。
(礼儀を尽くすことは自分に対してしていることと思え、人を見下すことも同様である。)
★自分の行いは自分に返ってきます。礼儀正しくしているとよくしてもらえるし、人を見下していると自分も見下されます。

そしるにも二つあるべし大方は 主人のためになるものと知れ

家臣が主人の悪口を言うのは二通りある。主人を思うあまり言う悪口と自分の利害から恨みからくる悪口である。良く聞いて判断するべきだ。
★寛大な心で言葉を受け止めよう。

つらしとて恨みかへすな我れ人に 報ひ報ひてはてしなき世ぞ

他人からの仕打ちがどんなに辛くても相手を恨み返してはならない。
恨みは恨みをよぶだけだ。
★恨みには徳で対処することが大切。

願わずば隔(へだ)てもあらじ偽(いつわり)の 世に誠ある伊勢の神垣

偽りの多い世の中であっても、誠のある伊勢皇大神は公平に人を見ているため、無理な願いをしなければ天は分け隔てをしない。
★天は必ずみています。誠を持って事にあたりましょう。

名を今に残し置きける人も人 心も心何かおとらん

後世に名を残した偉人も我々と同じ人であって違いはない。
心も同じであるから我々が劣っているのではない。
★偉人も同じ人間です。努力次第でどうにでもなります。

楽も苦も時過ぎぬれば跡もなし 世に残る名をただ思ふべし

楽しいことも苦しいことも、時が過ぎると跡かたもありません。
後世に名を残すよう心がけましょう。
★名前は後の世にも残ります。世のために尽くして良い名を残せるよう努力しよう。

昔より道ならずして驕る身の 天のせめにしあはざるはなし

昔から道に外れて驕った人で天罰を受けなかった人はいない。
★悪いことをすると、必ず天罰がくだります。

憂かりける今の身こそは先の世と おもへば今ぞ後の世ならん

辛く嫌なことの多いこの世は、前世の報いの結果であると思えば、現世の行いは後の世の姿である。
★因果応報です。現世の行いを大切にしよう。

亥にふして寅には起くと夕(ゆふ)露(つゆ)の 身を徒(いたずら)にあらせじがため

亥(午後10時)に寝て、寅(午前4時)に起き、露のようなはかない命を無駄にせず勤労すべきだ。
★早寝早起きして、時間を有効につかうことが大切。

のがるまじ所をかねて思ひきれ 時に到りて涼しかるべし

逃れることができない場合は、命を捨てるとかねてから覚悟を決めておくと、いざという時に未練なく心清らかであろう。
★どちらにしようか迷った時は、正しいと思う決断をすれば、後に「ああすればよかった」と後悔しないでしょう。

思ほへず違(たご)ふものなり身の上の 欲をはなれて義を守れ人(ひと)

私欲があると思わず道を外れてしまうものである。
私欲を捨てて義(正しい道)を守るようにしよう。
★欲のままに不正をすることは慎みましょう。

苦しくとすぐ道を行け九曲折の 未は鞍馬のさかさまの世ぞ

どんなに苦しくても正しい道を行け、つづら折りのように曲がった道を歩むと、末は鞍馬山から真っ逆さまに落ちるだろう。
★辛くても、面倒くさくても、正道を歩もう。

やはらぐと怒るをいはば弓と筆 鳥に二つの翼とを知れ

やわらぐと怒るをたとえれば、弓(武)と筆(文)です。
鳥に二つの翼があるようにどちらも持ち合わせなければならない。
★文武両道のように、優しさと厳しさを持ち合わせましょう。

万能も一心とあり事(つか)ふるに 身ばし頼むな思案(しあん)堪忍(かんにん)

ことわざに「万能一心」とある。多くの技芸をこなせても、真心が欠けていれば何の役にも立たない。
自分の才を頼りにして自慢せず、思案し堪忍することが大切。
★1番大切なことは心です。

賢(けん)不肖(ふしょう)用ひ捨つると言ふ人も 必ずならば殊勝(しゅしょう)なるべし

賢者を登用し、愚者を遠ざけて政治をするという人が、必ずその通りできたら感心である。
★内面を見抜くことは難しい、しっかりと人を見て評価しよう。

無勢(ぶぜい)とて敵を侮ることなかれ 多勢を見ても恐るべからず

敵が少数だからといって侮ってはいけない。
また大勢だからといって恐れてはならない。
★見た目で相手の実力を判断してはいけません。

心こそ軍(いくさ)する身の命なれ そろゆれば生き揃はねば死す

心こそ戦争する者の命である。軍の心が一つに揃えば勝ち、揃わなければ死を招く。
★何事も一致団結して取り組もう。

回向には我と人とを隔つなよ 看(かん)経(きん)はよししてもせずとも

回向するには味方と敵とを隔ててはいけない。
読経しようがしまいがよいので、等しく祀りなさい。
★亡くなった方には真心をこめて接しましょう。

敵となる人こそはわが師匠ぞと 思ひかへして身をも嗜め

自分にとって敵となる人こそわが師匠だと思い直してわが身をつつしみなさい。
★嫌いな人こそ反面教師だと思って学びましょう。

あきらけき目も呉竹(くれたけ)のこの世より 迷はばいかに後(のち)のやみぢは

あきらかなこの世で迷っていては、死後の世界ではますます迷ってしまうだろう。
★これからのことは分からない。迷いのない人生を送ろう。

酒も水流れも酒となるぞかし ただ情あれ君が言の葉

酒を与えても水のように思う者や、川の水であっても酒のように思うこともある。
上に立つ者は、情のある言葉をかけよ。
★思いやりのある言動が部下のやる気を引き出します。

聞くことも又見ることも心がら 皆まよひなりみな悟りなり

聞いたり見たりすることは、すべて自分の心の持ちようで迷いともなり悟りともなる。
★聞いたり見たりする時は、素直な気持ちでいよう。

弓を得て失ふことも大将の 心ひとつの手をばはなれず

軍の結束力をまとめるのも失うのも、すべて大将の心一つによるものだ。
★リーダーの心の持ちようは大事です。

めぐりては我が身にこそは事(つか)へけれ 先祖のまつり忠孝の道

祖を祀ることや、忠孝の道に尽くすことは、やがて自分にめぐりめぐってくる。
★人に優しくうると、自分も優しくされます。

道にただ身をば捨てむと思ひとれ 必ず天の助けあるべし

正しい道のために命を捨ててもよいと思っておこう、そうすれば必ず天の助けがあるはずだ。
★いつも正しいことをしよう。

舌だにも歯のこはきをば知るものを 人は心のなからましやは

舌でさえも歯が硬いことを知っている。ましてや人においてはなおさらだ。
★人間にが心があるのだから、相手のことを考えて行動しよう。

 酔(え)へる世をさましもやらで盃に 無明(むみょう)の酒をかさねるは憂し

この迷いの世の中をさましませずに盃を重ねていれば情けない。
★酒を飲んでいるだけでは問題の解決にならない。

ひとり身をあはれと思へ物ごとに 民(たみ)にはゆるす心あるべし

頼る者がない老人や孤児など独り身の人に対してはいたわりなさい。
民には寛大な心で接しなさい。
★人には優しく接しましょう。

もろもろの国や所の政道は 人に先(ま)づよく教へ習はせ

治める国や村の掟は、まず民に良く教え習わせなさい。
★決まり事はしっかり説明しましょう。一人で決めて行っても何にもならない。

善に移り過(あやま)れるをば改めよ 義不義は生れつかぬものなり

悪いことをしたらすぐに過ちを改めなさい。義不義は生まれつきのものではない。
★間違いに気づいたらすぐにやり直そう。

少しきを足れりとも知れ満ちぬれば 月もほどなき十六夜(いざよい)のそら

少し足りないぐらいを満足すると良い。月も満月の次の十六夜の月は欠け始める。
★欲を出しすぎるのはやめましょう。